今年2月に行った「福祉経営セミナー」から処遇改善・人件費の改定(人勧差額)に関して、その後お問い合わせや解説する機会の多い内容を3回に分けて掲載しています。
今回は人勧差額を基本給に反映するシミュレーションを行ってみたいと思います。
人勧は改定「率」で表示されていますね。
人勧改定率と同じだけ基本給アップしているから大丈夫、という声をお聞きすることがありますが、この考え方は果たして正しいでしょうか?
人勧改定率と同じ率の手当の場合
若手中心の職員構成とベテランの多い職員構成の施設を想定し、具体的に検証してみたいと思います。
(※セミナー参加者に配布した別紙(職員等級一覧や俸給表)の掲載は省略しています)
まず、スライド左側の毎月決まって支給する手当を新設するケースを見てみてみましょう。
同じ給与規程・俸給表を用いて本俸の5.2%相当の手当を新設した場合のシミュレーションです。
若手中心の施設では、法定福利費分を除いた賃金改善必要額(改善原資)に満たない一方、ベテランの多い施設では、改善原資を上回ってしまう結果となりました。
この様に職員の年齢分布の違いによって改善原資に対して過不足が発生してしまいます。
人勧改定率と同じ率で基本給をアップすると
次にスライド右側、本俸を5.2%ベースアップするケースを見てみましょう。
職員構成は上記の若手中心の施設を用います。
このケースでは本俸の改定だけを見ると手当の新設のケースと同じですが、本俸に連動して調整手当と賞与も増加することにより、総額では改善原資を大きく上回る結果となります。
人勧差額を越えて賃金改善することは職員にとっては有り難いことですが、毎年繰り返していると収入に対する人件費のバランスが崩れて、施設経営に影響する可能性も出てきます。
以上、「率」に注目して賃金改善を考えるのではなく、あくまでも改善原資(金額)を把握して実施することが重要と言えます。
また、公定価格FAQにはこの様な記載もありますので、改善額が大き過ぎないかも十分検討しておくことが必要ではないでしょうか。
処遇改善等加算通知第3の2に記載の「業績等」とは(中略)、職員個人の業績等に応じて変動することとされている賞与等を指します。したがって、事業者の業績等の低下を理由として、賃金の水準を低下させることはできません。
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