今年2月に行った「福祉経営セミナー」から処遇改善・人件費の改定(人勧差額)に関して、その後お問い合わせや解説する機会の多い内容を3回に分けて掲載しています。
本セミナー内で「処遇改善加算の一本化」に向けた検討が開始されるという話題に触れたのですが、ブログ執筆時点でも具体的な内容はなかなか聞こえてきませんね。
さて今回は、令和5年度の研修要件必須化を受けて処遇改善加算Ⅱの人数A(副主任保育士等)の分配を受けた人数B(職務分野別リーダー)の研修要件について解説します。
制度開始当初の考え方
スライド(例1)の通り、算定人数通りに賃金改善を実施しようとすると、職員1~5の5人がAの研修要件を満たしている必要があります。
計画的に研修受講していても、人材の流動化が進む中、退職・休職などで研修要件をクリアしていくことはハードルが高いという声をよくお聞きします。
研修要件を低く抑えるには
(例2)は(例1)と全く同じ人数A・Bの算定人数ですが、極端な例としてAの研修要件が必要な職員を1人だけにする方法です。
結果的に人数Aは職員1と主任の2人、人数Bは職員2~7の6人になります。
なぜこんなことが可能なのか、答えは平成30年の制度改正にあります。
平成29年度当初
- 人数Aの過半数に4万円の賃金改善を確保した上で、残額を4万円未満の賃金改善に充てることが可能。ただし、人数B対象者には分配できない
- 人数Aの4万円未満の分配を受ける人もAの研修要件が必要
平成30年度以降
- 人数Aの1人以上に4万円の賃金改善を確保した上で、残額を4万円未満の賃金改善に充てることが可能。また人数Bの対象者にも分配可能
- 人数Bの賃金改善額は、Aの最低賃金改善額を超えてはいけない
- 人数Bの対象者は算定人数以上を確保する
という様に要件が緩和されたんですね。
上記制度改正を読替えると、
- Aの残額の分配を受けても人数B対象者はBの研修要件でよい
- そして、人数Aの対象者は算定人数以下でもよい
つまり、加算額の算定に使う人数A・Bと実際に手当を支給する人数を分けて考えることができるのです。
制度の趣旨や職員のキャリアパスの観点からも研修受講が重要なことには変わりませんが、この改正により、各施設の人員構成や研修受講時間に柔軟に対応できる制度になったと言えます。
4万円の賃金改善対象者を減らすことはいかがなものか、というご意見もあろうかと思いますが、その場合は処遇改善加算Ⅰを少し多めに分配して、合計4万円の賃金改善をキープする等が考えられます。
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